2008-09-01
金とレアメタル−資源枯渇を回避するために− (協力:地学研究部 宮脇律郎)
日本列島は資源の宝庫?
今年1月,独立行政法人物質・材料研究機構は,「現在日本国内に蓄積されている金資源は約6,800トン」であるという統計を発表しました。これは2006年の世界の総需要,約3,900トンの1.7倍,現在の世界の全埋蔵量4万2000トンと比較しても約16%を占めるという驚くべき数字です。
先に紹介したように現在日本の公的機関が保有している金の量は約800トンに過ぎません。新しい鉱山が見つかったという訳では勿論ありませんし,身近なところでも硬貨として流通している金属はアルミニウムの1円玉を除けば全て銅の合金です。歯の治療は自然な歯の色と変わらない色を出すことのできるコンポジットレジンなどでの修復も増えています。宝飾品として身に着けている方は勿論あるでしょうが,誰でも身近に,という訳には行きません。
現在多くの日本人が日常的に携帯している「あるもの」には,1トンあたりにしておよそ400グラムの金が含まれています。日本で唯一稼動している鉱山である鹿児島県の菱刈金山の鉱石では1トンあたり40グラム以上の金が含まれ,世界的にも割合が高いことで知られていますが,それと比較しても約10倍の高割合です。
現在の普及率は単身世帯を含めた統計で95%以上。通信機器として,カメラとして,目覚し代わりとして,ゲーム機として,音楽プレイヤーとして…持っている方で1日1度もそれに触らない,という方はまずいないでしょう。持っていない方も家の外に出ればほぼ確実に目にする「あるもの」 ― 携帯電話は機種変更の後捨てられたり,元の使用者がそのまま所有していることも多くありますが,これを確実に回収・リサイクルすることで金をはじめ多くの金属資源を獲得することができるのです。
携帯電話・携帯音楽プレイヤー・デジタルカメラ・パソコンなど現在極めて身近になったこれらの電子機器から資源を取り出す方法は幾つかありますが,そのひとつ「乾式プロセス」と呼ばれる方法では,先ず使用済みのそれら製品を解体・破砕し,次に天然の鉱石と共に1,000度以上の高温の炉で溶かします。その後それぞれの金属の性質の違いを利用して分離・製錬して回収します。
電子機器に含まれている金属は非常に種類数が多い上,形態や量も一定ではないため,必要な金属だけを選んで製錬することは容易ではありませんが,製錬プロセスの研究を続け,原料全体に占めるリサイクル由来原料の割合が約30%に達した精錬所もあります。
金メッキの工程上で発生する使用済みの金メッキ液,メッキされた直後の製品の洗浄液などからの金の再回収も行われており,限りある資源の保護と有効利用の努力が続けられています。
(写真:携帯電話基盤)