金とレアメタル−資源枯渇を回避するために− (協力:地学研究部 宮脇律郎)
金より希少?レアメタルとは
工業用に使用されている金属のうち,鉄や銅・亜鉛・アルミニウムなどの広く一般に使われる金属,及び金・銀などの貴金属を除いた,流通量や使用量の少ない希少な金属を「レアメタル」と呼びます(※3)。
全ての金属の中で最も軽いリチウムは携帯電話やノートパソコンの充電電池として使用されています。
強度が高い上錆びにくいチタン合金は ,汗などの分泌物で腐食されにくいことからアクセサリーに使われるほか,歯のインプラント,人工骨などの医学的用途にも有用です。チタンの酸化物は,光が当たると有機物を分解することができる「光触媒」の効果を持つため,建物の壁,自動車のミラーやトイレなどにコーティングすると汚れや臭いを抑えることができます。
クロムは鉄とニッケルとの合金「ステンレス鋼」として自動車の外装や流し台,調理器具などに使われています。日本の産業にとって重要な金属ですが国内では産出せず,南アフリカ・インド・カザフスタンなどからの輸入に頼っています。このため万一の国際的な有事によって輸入が止まった場合に備え,最低60日分の国内消費量を国が備蓄しておくよう定められている鉱物資源のひとつです。
ガリウムはシリコン製のものより発熱の少ない,新たな半導体の素材としてパソコンや携帯電話に使われています。リンとの化合物から赤色・黄緑色の,そして窒素化合物からは青色の発光ダイオードをつくることもできます。
パラジウムはそれ自体の体積の900倍以上もの水素を吸収することができ,水素の精製に使用されています。また金銀との合金は歯科治療の歯冠(銀色になるためいわゆる「銀歯」)や装飾品,電子機器の部品に使われています。
テルルは単体,化合物共に毒性があり,ニンニクのような悪臭を持ちます。しかし熱を加えることで結晶化・非結晶化を何度も繰り返させることが可能な性質があるため,書き換えができるDVDの記録膜などに利用されます。
レアメタルの中でも原子番号57番のランタンから71番のルテチウムまで(周期表上では「ランタノイド」として別記されます)に,21番のスカンジウム,39番のイットリウムを加えた17種類をレアアース(希土類元素)と呼びます 。金や銀などの貴金属と比べて埋蔵量は多いものの,単独で分離することが困難なため希少な素材です。
スカンジウムはランプに封入すると太陽光に近い光を発するため,野球場などの夜間照明に使われています。
ネオジムは鉄とホウ素と化合させることで非常に強力な永久磁石を造ることができます。
ユーロピウムはテレビのブラウン管のうち,赤色の蛍光体として使われてきました。
ガドリニウムは常温で高い磁性を持ち,MOなどの光磁気ディスクの材料やMRI検査の造影剤として使われています。
ジスプロシウムは中性子を吸収する能力が高く,鉛やガドリニウムとの合金として原子炉の制御に有用です。また光のエネルギーを蓄積させて発光する性質があるため,夜光塗料としても使われます。
レアアースの供給はほとんどを中国からの輸入に頼っているのが現状です。日本国内のマンガン鉱床に含まれるレアアースに,新たな供給源として注目が高まっています。
この他,定義にもよりますが合計で約50種程度のレアメタルがあり,いずれも供給・需要とも多くはないもののいずれも現在の機械社会・情報社会に欠かせないものばかりです。
金と同じく携帯電話などの電子機器に含まれているものも多く,リサイクルは今後の大きな課題となっています。
※3 金なども含め,鉄以外の金属全体をレアメタルと呼ぶ場合もあります。
(写真:DVDとMO)