私たちの宇宙が膨張しており、その膨張速度は天体の距離に比例していることがハッブルの発見によって分かったことです。
では、ちょっと映画やビデオを逆回しするように、時間をさかのぼってみましょう。するとどうでしょう、天体はだんだん近づいていきます。それも距離の遠いものほど速く集まって来るように見えます。そしてついに、すべての天体が一点に集まってしまいます。宇宙の物質が一点に集まったとしたら、そこは非常な高温に、また非常な高密度になるはずです。
つまり、はるかな昔には宇宙が小さくて、超高温度の火の玉のようなものだったと考えることができます。そして、この火の玉が爆発的に膨張を始めることでわれわれの宇宙ができたと考えることもできます。これをビッグ・バンとよぶのです。ビッグとは英語で大きい、バンとは爆発という意味です。
このように考えると、都合のよいことがあります。たとえば、宇宙の物質のほとんどが水素とヘリウムで出来ていることなどですが、本当のことを知るためには、ビッグ・バンが起こったという証拠が必要です。
じつはその証拠は1965年に見つかりました。それは宇宙のどの方向をみても、そこから絶対温度で3度の熱放射がきていることでした。これを3K宇宙背景放射(Kは絶対温度の意味)とよびます。この放射は宇宙が小さい火の玉だったときのなごりなのです。超高温だった宇宙が現在まで膨張して、3Kの低温度になってしまった、というわけなのです。この放射を発見したアメリカのぺンジアスとウィルソンはノーベル賞を与えられました。
宇宙の歴史
宇宙の歴史
ビッグ・バンによって誕生した宇宙の歴史をかんたんに振り返ってみましょう。
宇宙が誕生した直後は本当に超高温、超高密度の小さな宇宙ですが、時間がたち膨張するにしたがって、その温度と密度は小さくなります。その間に重力や電気・磁気の力などの基本的な力が生まれてきます。宇宙が生まれてほぼ1秒後には電子や陽子など私たちにおなじみの素粒子、さらに光が誕生しています。このときの宇宙の大きさは1光年ぐらい、温度は100億度です。さらに、数分後には水素やヘリウムなどの原子核が生まれています。
そして、宇宙の誕生から約38万年後、宇宙の大きさが1000万光年ほど、温度が約3000度になると、水素やヘリウムの原子核と電子が結びついて、水素やヘリウムの原子ができあがります。このとき、やっと光が物質から離れて自由に飛びまわれるようになるのですが、これを宇宙の晴れ上がりとよんでいます。そしてこのときの光が、3K宇宙背景放射として、現在も観測できるのです。逆にいうとこれより前の宇宙のようすは、直接見ることはできません。また、宇宙の誕生から10億年ほどたつと銀河が作られはじめます。それから、さらに膨張をつづけて現在の宇宙になったというわけです。
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