ブラックホールは、いまではたいへん有名で、だれもがその名前を知っている天体ですね。ブラックホールは英語で、そのまま訳すと、黒い穴、という意味になります。これは、その重力が大きすぎて、そこから光でさえも逃げだしてくることができない天体のことを表しています。光もでてこれないということは、その天体が真っ黒だということですので、ブラックホールと名付けられました。
天体の上から、ボールをま上に投げ上げるとします、もしそのボールの速さが、その天体の重力を振り切ってしまうほどの速さだったら、ボールは落ちてこないで、そのまま飛んでいってしまいます。その速さを、脱出速度といいます。たとえば、地球の脱出速度は秒速11kmです。
ところが、もしこの脱出速度が光の速さより大きな天体があったとしたら、どうでしょう。その天体の上から、どんな速さでボールを投げ上げても、ボールはかならずその天体に落ちてきてしまいます。なぜなら、物体の速さは、秒速30万kmの光の速さ以上になることはできないからです。光でも同じことがおこります。その天体の上で光を出したとしても、出た光は天体の重力で引き戻され、天体から逃げだしていくことはできません。こういう天体がブラックホールです。
ブラックホールを相対性理論で説明すると、それは空間のゆがみと考えることもできます。たとえば、広くはられたうすいゴムのシートを考えてみます。このゴムの上に何か物、たとえばビー玉をおいてみましょう。すると、ビー玉をおいたところが少しへこみ、そのへこみはビー玉のまわりに広がっているでしょう。これが空間のゆがみだと考えて下さい、ブラックホールのあるところでは、強い重力で空間がゆがみ、まるで空間にあながあいているようだともいえます。あなの近くにさしかかつた天体は、その強い重力にとらえられて、このあなに落ちていきます。光でさえも逃げ出すことができないほど強い重力で切り立ったあな、それが相対性理論でみたブラックホールなのです。
ブラック・ホール
天体の中のブラックホール
天体の表面での重力の大きさは、その天体の質量に比例しており、天体の質量が大きいほど大きくなります。また同時に、天体の大きさの二乗に反比例しています。つまり、天体が小さければ小さいほど、重力は大きくなるのです。そうすると、ある天体をぎゅっと押し縮めて、小さくすると、その表面の重力が大きくなり、脱出速度が光の速さより速くなって、ブラックホールができるでしょう。私たちの太陽を押し縮めて、直径6kmの球にしたとすれば、太陽はブラックホールになってしまいます。
このようなことが、宇宙では実際におこっています。それは、星の一生の最後におこる大爆発、超新星です。星全体を吹き飛ばし、太陽の数億倍に輝く超新星爆発は太陽の8倍以上の質量をもつ重い星でおこります。中でも非常に重い星の場合には、星のしんの部分が爆発の反動で押し縮められ、非常に小さくまた高い密度の天体が残ります。その一つが中性子星、パルサーとよばれるものですが、残ったしんの質量が大きい時には、重力が強すぎてどんどん小さく縮んでいき、ついにはブラックホールとなるのです。
ブラックホールからは、光がでてこないので直接見ることはできません。しかし、ブラックホールに物質が落ち込むと、位置のエネルギーが解放されて物質が光るのが見えます。ブラックホールのすぐそばにもう一つの星があり、おたがいに回りあっている場合。すなわち、ブラックホールが連星の中にあるときは、相手の星から放出されたガスがブラックホールに落ち込んで、強いX線やガンマ線を出すので、これを観測することができます。また実際このようにして、連星の中にブラックホールが発見されています。
また、銀河の中心のように、非常に小さいところに、太陽の何百万倍もの質量が集中しているところもあります。ここからはやはり強いX線や電波が観測され、質量の大きなブラックホールがあると思われています。
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