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役に立つ藻類
海や湖沼からの恵みである美味しい魚介類は全て植物プランクトンによる基礎生産から作られています。ここではその中でも、藻類の直接的な利用の例を紹介します。
≪食材・栄養補助食品としての利用≫
周囲を海に囲まれた日本では、ご存じのように海藻が食材として幅広く使われています。世界的に見ると海藻を食べる文化というのは稀ですが、近年の健康ブームもあり、海藻を食べる人が世界的に増えています。
淡水の藻類は、日本ではあまり食用にしません。地方によってはスイゼンジノリのように岩に付着している藻類を食べる地域もあります。海外ではタイの北部では河川の底に大量に発生しているアオミドロを食用にします。また、アフリカのチャド湖では、大量に発生しているプランクトン藻類のスピルリナをすくって乾燥させたものを食用にします。タンパク質が豊富なため、未来の食用資源として着目されました。
藻類には人の健康にとって重要な様々な物質が蓄積しています。そのため、健康補助食品(サプリメント)として藻類を利用する事が昔から行われていました。
スピルリナ(spirulina)は、らせん型のプランクトン藍藻です。スピルリナは、現在は分類学的にはアルソスピラ属(Arthospira)になりますが、慣用的にスピルリナと呼ばれています。
写真: アルソスピラ属(Arthospira)
ドナリエラ(Dunaliella)は、塩分の高いところにする単細胞緑藻です。カロテノイドを細胞内に蓄積するため、赤みがかった色をしています。クロレラは、淡水に棲息する単細胞緑藻のなかまです。
ミドリムシ(ユーグレナ:Euglena)は、近年栄養補助食品に加えて食材としての利用も広がっています。上記した以外にも様々な微細藻類の利用が検討されています。また、大形藻類(海藻)も栄養補助職遺品として加工されることがあります。
写真: ミドリムシ(ユーグレナ)の一種(Euglena sp.)
備考:微細藻類には栄養分や健康に関係する物質を大量に含むものがあるため、サプリメントとして用いられていますが、含有成分による副作用などの健康被害も報告されているようです。また、人での有効性について証明がないのに広告されていることも散見されます。利用にあたっては下記のホームページなどから確かな情報を得てから利用して下さい。本ホームページは上記した藻類起源のサプリメントについての有用性について保証するものではありません。
LINK
http://www.nibiohn.go.jp/eiken/index.html
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail86.html
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail105.html
「ミドリムシ、ユーグレナ」(「健康食品」の素材情報データベース)
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail2977.html
≪バイオ燃料としての利用≫
石油は太古に、大量発生したプランクトン藻類が堆積して、時間をかけて変成したものです。この過程を人工的に引き起こし、藻類を使って石油などの燃料油を作り出す研究が脚光を浴びています。
ボトリオコッカス(Botryococcus braunii)は、熱帯域など暖かい地域に生息する緑藻のなかまでプランクトンです。陸上の植物は光合成で出来た物をデンプンなどの炭水化物として蓄えますが、このなかまは油(炭化水素)として蓄えます。そのため、この光合成で出来た油を集めて利用する研究が進められています。研究は日々進展しており、様々な藻類を用いた研究が進められています。
写真: ボトリオコックス(Botryococcus braunii)
≪微化石の利用≫
珪藻土は、太古にプランクトン珪藻が大量発生し、死後に死骸が厚く堆積したものです。日本各地に珪藻土鉱床が存在します。
写真: 珪藻土鉱床
珪藻土は、長い間、七輪の材料や壁材として利用されてきました。近年では、工業的に濾過を行うときに補助剤として利用されています。身近な例では生ビールの濾過にも珪藻土が利用されています。
チョークは、同様にハプト藻類の死骸が厚く堆積したものです。有名な例では、ドーバー海峡に面したイギリスの海岸に見られる「白亜の壁」が上げられます。
写真: 白亜の壁(イギリス)
白亜とはチョークのことです。この白亜の壁は、白亜紀にハプト藻類の死骸が深海底に厚く堆積した物が、隆起によって陸上で見られるようになったものです。チョークは、筆記具のチョークの材料として使われていました(現在は人工の炭酸カルシウムが使われています)。