星と星がぶつかることは、太陽付近ではまずありえません。それは、星の大きさや運動の速度にくらべて、星のあいだの距離がひじょうに大きいからです。太陽を一円玉の大きさに縮めて東京におくと、太陽に一番近い恒星のケンタウルス座アルファ星は、東京から距離300kmのところを時速2mmで移動している一円玉ということになります。
それでは、銀河と銀河のあいだではどうでしょうか。私たちの銀河系やアンドロメダ大星雲、すなわちアンドロメダ銀河の大きさは約10万光年で、そのあいだの距離は230万光年です。太陽とケンタウルス座アルファ星のあいだの距離が太陽の大きさの三千万倍であるのに対し、アンドロメダ銀河までは銀河系の大きさの23倍しかありません。そうすると、となりの銀河がもっと近くにあるようなところでは銀河どうしがぶつかることもありそうです。
おとめ座の方向にカメラを向けると、たくさんの銀河が写ります。これは、じっさいにたくさんの銀河が集まっているからで、このような銀河の集まりを銀河団といいます。銀河団の写真をよく見ると、いくつかの銀河がかたまっていたり、その中に形のくずれた銀河が見つかったりします。こういう形のくずれた銀河を特異銀河とよびます。二つの銀河でおたがいの渦巻の腕がつながっていたり、それぞれから長い腕がのびて交差しているような形の銀河は、二つの銀河が接近した時におたがいの重力による潮汐作用がはたらいてできた、と考えられます。また、中心部に別の銀河が衝突して通り過ぎた、と考えられるリング状の銀河も見つかっています。
接近した時の潮汐力による銀河の変形もふくめて、銀河どうしがぶつかることはそんなに珍しいことではないようです。星と星のあいだはひじょうに離れているので、銀河どうしが衝突しても、おたがいの銀河の星どうしがぶつかることはありませんが、星間ガスや星間雲どうしは激しく衝突し圧縮されます。ここから爆発的に星が誕生するようすも、衝突している銀河では観測されています。
衝突している銀河の一つ、からす座の電波銀河の写真(青色の部分で爆発的に星が誕生しています)とこの銀河の衝突の様子のシミュレーションをご紹介します。
からす座の電波銀河
提供:NASA / STScI
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銀河の衝突
シミュレーションムービー
画面
470×350
2.02MB (MP4形式)
画面
342×228
1.17MB (MP4形式)
提供:
成見 哲 東京大学
戎崎 俊一 理化学研究所
吉澤 明 東北大学
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