海洋生物の多様性ジオラマ作りの難しさと面白さ
海の生物多様性を示す展示のうち熱帯の海、温帯の海、亜寒帯の海のジオラマ製作にあたっては研究者がそれぞれを代表する場所で潜水し、水中写真を撮ったり、展示用の生物を採集したりしました。私はそれまでも研究用標本採集のために潜水は幾度となく行っていましたが、展示をつくるという目的で潜水して生物のすむ場所を見たことはありませんでした。いずれの場所でも、潜ってすぐに、これを展示にすることは思うより難しそうだということを感じました。
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温帯の海
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亜寒帯の海
亜寒帯や温帯では海藻が、熱帯ではサンゴがびっしりと生い茂り、みなさんがこれらの展示を見るような位置からは小さい生物はほとんど見えないのです。また、たとえ海藻のジャングルに分け入ったとしても、そこにいる生物の上にはまた別の生物が付着し、その生物を見難くしています。
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【亜寒帯の海】上:オオヒゲヒザラガイ、下:オオバンヒザラガイ
ジオラマ製作ではこれをよりよく見えるようにすればするほど、実際に生物がすむ様子や海底の環境との違いが大きくなっていってしまうことになります。展示ではなるべく実際の様子を再現したい。このバランスをどうするか、これがジオラマ作りの難しさであり面白さだと思います。
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【温帯の海】矢印左から順に、アコヤガイ、ウズイチモンジガイ、クロアワビ、ダンカイケヤリ 等
同じような展示を今、もう一度作ったとすれば、それぞれの生き物をもう少しよく見えるように工夫するかもしれませんが、当時は多少見難くても実際に近づけたいという思いのほうが強かった記憶があります。ですからみなさんにはそれぞれの展示で生き物を探すように見ていただきたいと思っています。