クモ類

ミャンマーのクモ類

ミャンマーのクモ(クモ綱Arachnida:クモ目Araneae)については、1878年、英国のThe Annals and Magazine of Natural History 誌(第5シリーズ)の第2巻に掲載された論文「クモの2新種の記載」(著者はThomas Workman)によって、ラングーン(現ヤンゴン)で採集されたユウレイグモ科およびヒメグモ科の数種が記録されたのが最初です。その後、Tamerlan Thorell (1887, 1895, 1897, 1898)らおもにヨーロッパの研究者によりにより数100種のクモが記録されましたが、その大半は19世紀になされたもので、20世紀以降は不安定な国情からほとんど調査が行なわれていません。現時点での同国の既知種は約600種(小野、 未発表資料)に過ぎませんが、実際には、この3倍以上の種が生息していると推測されています。

クモのフィールド調査

2017年から2019年にかけて、ミャンマー各地で5回の調査を実施し、1,000個体以上のクモを採集しました。調査にあたっては、見つけ採りのほか、下草のスウィーピング(捕虫網を用いたすくい捕り法)や樹木の枝葉のビーティング(たたき落とし法)、落葉層のシフティング(篩取り法)などの採集方法を駆使します。ピットホールトラップ(プラスチックのコップを使って地面に仕掛けた落とし穴)などの昆虫を捕らえるための罠にもよくクモが入ります。
それらの標本は、筑波研究施設の自然史標本棟に保管し、研究室で順次、同定、研究を進め、これまでに南部のランピ島から原始的なハラフシグモの新種を発見するなど、徐々に成果をあげることができています。

Liphistius tanakai

ランピ島で発見されたハラフシグモ科の新種Liphistius tanakai (体長 14 mm)

Coillina baka01
Coillina baka02

ミャンマー初記録のワシグモ科の1種Coillina baka(左:メス、右:オス)

Chilobrachys andersonii

タニンタリー地方で採集されたタランチュラ(オオツチグモ科)Chilobrachys andersonii (体長50 mm)

Utivarachna phyllicola

東南アジアに広く分布するネコグモ科の1種(ミャンマーにおける分布を確認)Utivarachna phyllicola(体長3.6mm)