大浦山洞穴の人骨破片
2008年7月23日更新
食人を伴った特異な解体埋葬として報告された神奈川県大浦山洞穴資料について、‘05年より再整理や発掘記録の調査を行っている。人骨資料については、年齢構成に偏りが認められ、部位間の最小個体数における変動がこれまでの報告よりも小さいこと、骨片の約3〜4割に損傷痕が認められること等をすでに報告した(佐宗・諏訪, 2006)。本報告では、人骨の損傷をより詳細に観察するとともに、同洞窟から出土した獣骨との比較分析を行い、損傷パターンに見られる相違を検討した。その結果、人骨と獣骨は、出土部位の構成パターンや各部位の損傷比率パターンでは類似性が認められた。他方、人骨は獣骨に比して、骨片の出土位置が集中しており、非人為的損傷による骨外表面の劣化が少なかった。また、接合関係では獣骨では他区間どうしの骨片の接合例は見られなかったのに対し、人骨では離れた発掘地点から出土した骨片間での接合がみられた。そのほか、年齢構成、損傷痕の指向性、骨の破片率に違いがみられた(佐宗・釼持・諏訪, 2008; 詳細はこちら)。これらは人骨が獣骨よりも、より意図的に破壊され、洞穴内にばら撒かれ、埋められていたことを示唆しており、鈴木尚の見解を支持する数量的データを提示することができた。
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