コケ類
コケ類標本室には約24万点の標本が収蔵されています。
これらの標本は本館職員の服部新佐(在職1941-45)、井上浩(1962-89)、樋口正信(1993-2021)、井上侑哉(2021-現在)により、収集、交換等によって国内と国外から集められたものと当館に寄贈されたものが中心となっています。
特徴的な標本として、
(1)タイプ(基準)標本、
(2)笹岡久彦、井上浩、長田武正、斉藤亀三、渡辺良象、永野巌等の個人コレクション、
(3)井上浩のハネゴケ属、斉藤亀三のセンボンゴケ科の分類群コレクション、
(4)ニューギニア、南米(チリ、ペルー)、ヒマラヤ(ネパール、パキスタン)の地域コレクションなどを含みます。
約1150点のタイプ標本は利用の便宜をはかるため、種名、発表文献、発表年、採集地などの基本情報がデータベース化され、国立科学博物館ホームページ上での検索が可能となっています。
笹岡久彦コレクションは1900年代初期に日本で採集された蘚類約1万点(約120点のタイプ標本を含む)からなり、日本の蘚類フロラの解明に重要な役割をはたした標本です。ハネゴケ属を研究した井上浩により世界中から集められた約5000点の標本は世界で最も質、量ともに充実した本属の標本コレクションとなっています。ニューギニア、南米、ヒマラヤの地域コレクションは当館が科学研究費補助金によって実施した海外調査により収集されたもので、現在もアジア、オセアニア地域を中心に標本の収集が進められており、これらをもとに当該地域のコケ植物フロラの解明や各分類群の分類学的研究が進められています。
コケ植物は維管束植物に比べ小形のものが多く、野外で採集されたコケ植物は通常さく葉(押し葉)標本にはせず、自然乾燥後、標本袋(タテ11cm、ヨコ15cm)に入れて保管します。標本袋は広げて見やすいように、一枚の紙を折りたたんだものが世界で共通に使用されています。標本は木製ロッカーの引出の中にカードのように立てて整理され、コケ類の3つのグループ(蘚類、苔類、ツノゴケ類)ごとに学名のアルファベット順で配列されています。大形の標本はその大きさに応じたサイズの標本袋に入れられるか、または台紙に貼られています。タイプ標本、大形の標本、台紙に貼られた標本は上配の標本とは別に保管されています。
標本は水に戻し、プレパラートを作製した後、顕微鏡で各部の観察を行う。
コケ植物標本室
コケ植物標本