植物研究部

大型藻類
 藻類は、多くの系統学的に異質なグループからなり、大きさもμm単位の植物プランクトンから十数mにおよぶコンブ類まで実に多様です。そのため標本の形態も単純ではありません。当研究部では、まず便宜的に顕微鏡的なサイズの微細藻類(主に単細胞性藻類)と肉眼的なサイズの大型藻類(多細胞性藻類)を区別して管理部門を分けています。ここで紹介する大型藻類の場合、さく葉(押し葉)標本と液浸標本が主な保管手段となっています。

●さく葉標本室
 国内各地で採取された標本と海外の諸機関から寄贈されたエキシカータ標本からなる約6万5千点を収蔵しています。これらは維管束植物と同様に乾燥処理を施され、台紙の上に貼り付いた状態で保存されています。大型藻類の大部分は緑藻類・褐藻類・紅藻類のいずれかに分類することができるので、当標本庫では一般標本をこの3つに区分したうえで学名のアルファベット順に配列しています。現在データベース化が進められており、藻と褐藻についてパソコンによる検索が可能です。
 特殊な標本として、タイプ標本(約90点)、岡村金太郎が同定を行った標本(約1400点)、東道太郎コレクションが一般標本とは別に保管されています。岡村金太郎(1867-1935)は、日本沿岸の海藻類について明治から昭和初期にかけて数多くの業績を残した学者で、日本海藻学のパイオニアとして著名です。岡村同定標本についてはデータベース化が完了し、パソコンによる検索が可能となっています。また、彼の著書のなかでとりわけ重要なもののひとつに1907年から1942年の間に全7巻が出版された「日本藻類図譜」がありますが、当標本室には第4巻までの図版の原図が一部保管されています。

●液浸標本室
海藻類は乾燥すると本来の形状を失ってしまうことが多いので、固定液による液浸保存もしばしば行われます。当標本庫には約1万点の液浸標本が保管されています。また、ジャイアントケルプなどの巨大藻類の標本がグリセリン含浸によって保存されています。標本は登録順に並べられ、約2千点についてカードとパソコンによる検索が可能です。
大型藻類標本
岡村金太郎博士が同定したヒビロウドの標本。明治27年に斎田功太郎が採集。

大型藻類標本
1908年に岡村金太郎博士がヒビロウドDudresnaya japonica Okamuraを新種記載したときに使用した図版原図