変形菌
2018年3月現在約74,000点が保管されています。その中には、研究上ばかりでなく日本の変形菌分類学史的にも価値の高い4つの主要なコレクションが含まれています。
●草野コレクション(約200点)
草野俊助氏(1874-1962)が東京帝国大学に在学・在職中、小石川植物園や駒場農場で採集した変形菌標本です。これらは、日本人により初めて本格的に採集された日本産変形菌標本であり、1904年にイギリスのA.リスターによって発表された日本産変形菌第1報に引用された標本の重複標本を含みます。
●南方コレクション(約6,000点)
日本の変形菌分類学研究の基礎を築いた南方熊楠氏(1867-1941)によって所蔵されていた、歴史的に価値の高い変形菌標本です。門下生の採集した標本や日本各地から送られてきた同定依頼標本も多く含みます。また、当館には南方熊楠彩色図と呼ばれるきのこやカビの図譜(図と標本と記載がセットになったもの)も数千点が保管されています。
●小畔コレクション(約16,000点)
南方熊楠氏の門下生である小畔四郎氏(1875-1951)が所蔵していた変形菌標本です。種の形態的変異の研究に役立つように日本各地から採集されている上、未発表の新種を100以上含むため、日本産変形菌フロラを解明する上で重要なコレクションであり、すでに一部は1998年発行の山本幸憲著「図説 日本の変形菌」に引用されています。
●江本コレクション(約2,000点)
江本義数氏(1892-1979)によって所蔵されていた変形菌標本で、1942年発行の日本最初の変形菌モノグラフ・江本著「大日本植物誌 No. 8,変形菌類」の引用標本がコレクションの中心をなしています。ちなみに、その原色図譜は35年後の1977年にようやく刊行された。10点の基準標本が含まれています。また、多くの海外交換標本が含まれていることも特徴の1つで、その数は200種を越えます。
これらのコレクションの他に、現在活躍中の山本幸憲氏(1947-)が採集した変形菌標本約25,000点の受け入れが進行中です。さらに、日本変形菌研究会(1977年創立)が収集した変形菌標本の受け入れは約12,000点を越え、現在も続いています。研究会寄贈標本は、研究以外にも当館の展示や教育普及活動に著しく役立っています。また、当館主催の海外調査の成果であるヒマラヤ地域などの変形菌標本は、1000点を越え、すべてが一連のヒマラヤ産変形菌の研究論文などに引用されています。
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南方コレクションの一部
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日本人採集の変形菌標本の中で最も古い標本
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江本コレクションの原色図
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アミサカズキホコリの基準標本