高尾コレクションは、瀬戸内海の小豆島沖の海底から採集された、ナウマンゾウを中心とする哺乳類化石のコレクションです。瀬戸内海は、氷河時代に海水準が下がったころには広大な陸地となっており、多様な大型動物が生息していました。それらが化石として含まれている地層が瀬戸内海の海底に露出し、海流によって地層から化石が洗い出され、低地に集まっているらしいと考えられています。それらの化石が地引き網や漁船の網に掛かって引き上げられるのです。小豆島在住であった高尾寿氏は、20歳の頃から50年以上にわたってこれらの化石を収集してこられました。l969年に氏のご厚意によりそのコレクションを一括して当館がゆずり受けたものです。
主な化石はナウマンゾウの歯や骨で、約550点にのぼります。頭骨の一部、下顎、臼歯、牙、四肢骨各種、背骨など、骨格の大部分の骨を含むほか、幼獣から老獣まで多様な年齢層の個体も含まれています。したがって、ナウマンゾウの個体変異や成長に伴う変異などについて詳しい研究が可能であり、その結果は当館の研究報告に発表されています(Hasegawa、l972)。ナウマンゾウのほかには、多数の各種シカ類(主に角、約350点)や、若干のウシ類食肉類の化石も含まれています。シカ類についても、その分類学的な研究が当館の研究報告に発表されています(Otsuka&Shikama, 1977)。このほかに各種の古脊椎動物の研究標本が、生命進化史研究グループにより管理されており、その多くはデータベースとして公開されています。