2008-05-20
速報:5月12日,中国四川省大地震 (協力:地学研究部 堤之恭)
今回の地震の特徴(1)
四川大地震の震源域は,ユーラシアプレートとインドプレートという2枚の大陸プレートの衝突の境界付近に当たります。
インドプレートは1年間でおよそ5.8cmのスピードで北に動いており,ユーラシアプレートとの衝突はヒマラヤ山脈やチベット高原を隆起させたことでも知られています。
ユーラシアプレートに衝突したインドプレートはユーラシアプレートの下に潜り込もうとしますが,インドの北と西には巨大なユーラシア大陸が広がっているため,容易には潜り込むことができません。東側には硬い岩盤ブロックがありこちらも進むことができません。その結果余った歪みのエネルギーは,ヒマラヤ山脈の南東で大きく南に回りこんでいます。この力の回り込みに平行,および直交する形で断層帯が発達し,中国内陸部からヒマラヤ山脈東端に掛けての地域に巨大地震を引き起こす原因となっています。
地震時に地盤に働く力の方向は,断層の形によって変わります。今回の四川大地震は,ひとつの地盤が他の地盤の上に押し上げられる「逆断層」タイプの地震でした。
東京大学地震研究所が地震波形や余震分布などを解析した結果,今回の地震は四川省を北東−南西方向に走る長さ約300キロメートルの巨大な竜門山断層の少なくとも一部が動いたことによるものと考えられています。
また,筑波大学の八木勇治准教授らの解析によれば,逆断層が動いたおよそ60秒後に断層の北側で地盤同士が水平にずれており,地震に関連した断層がふたつあった可能性も示唆されています。
このような複数の断層がほぼ同時に動いて大規模地震を起こす可能性は,日本でも駿河湾の東海地震と静岡沖の東南海地震,紀伊半島の南海地震で論じられています。
この竜門山断層の上に,余震の震源地と被害の大きい地域が集中しています。四川省の省都であり人口1千万人を超える成都市は,震源からの距離は約70kmで犠牲者はおよそ1000人,一方で断層上にある北川羌族自治県では,震源からの距離は約150kmですが7000人以上の犠牲者が出ています。被害の大きさは地盤の強度や建物の構造によって大きく変わりますが,震源となった断層からの距離が小さいほど被害が大きくなるのは地震一般についても言えることです。
図:東アジア地域のプレートと今回の震源