2009-06-15

11月に南極へ ― 砕氷艦『しらせ』2代目就役(協力:海上自衛隊横須賀地方総監部)


5月30日・31日「しらせ」一般公開レポート @

 日本の南極観測に長年活躍し,老朽化を理由に昨年の夏を最後に引退した初代「しらせ」。後継となる(※1)砕氷艦,2代目「しらせ」(以降,「しらせ」と書きます)は2007年から,京都府舞鶴で建造が進められてきましたが,今年5月20日に完成,25日には母港となる,海上自衛隊横須賀基地に到着しました。

 今回の「ホットニュース」では,新しい「しらせ」を中心に,南極観測の最新情報をお届けします。




 「しらせ」最大の任務は南極へ,人と物資を輸送することです。
 「しらせ」の基準排水量(燃料は積み込まず,乗員は乗っている状態の艦船の重量)はおよそ12,650トン。初代と比べ約1,000トン大きくなりました。乗員は179名,加えて観測隊員を最大80名まで(初代は合計235名まで)乗せることができます。積載できる物資は約1,100トン(同1,000トン),内約600トンは燃料ですが,必要とする燃料は初代とほとんど変わらないため,純粋に約100トン分積載量が増えています。

 南極を取り巻く南極海の海氷は,その多くが厚さ1メートル程度と比較的薄いものです。「しらせ」は厚さ1.5メートル(日本が南極観測を行っている昭和基地の周りのリュッツォホルム湾で多く見られる海氷の厚さ)までの氷であれば,推進力によって砕きながら3ノット(時速約5.6キロ)の速さで進み続けることができます。
 厚さ1.5メートル以上の氷は,一旦艦を200〜300メートル後退させた後に全速前進して氷に乗り上げ,艦自体の重さで氷を割る,ラミングと呼ばれる方法で砕氷します。初代「しらせ」の最後の任務となった2007年の南極観測では,2,600回以上のラミングが行われました。

 「しらせ」は初代の時代から,オーストラリア・南極間の往復の航海の途上,海洋環境の観測を行ってきました。
 そのひとつが,海底に向けて音波を発射し,反響で深度を測る音響測深を利用した海底地形探査です。初代では艦が航行した真下の深度を知ることしかできませんでしたが,新しい「しらせ」には艦の左右方向に広がった扇形の海域の深度を同時に測ることができる,マルチビーム音響測深機が搭載されており活躍が期待されます。

※1 初代「しらせ」の引退後,昨年11月に出発した第50次の観測隊は,オーストラリアの民間砕氷船「オーロラ・オーストラリス」をチャーターしました。「オーロラ・オーストラリス」は後述する日本のかつての砕氷艦「ふじ」とほぼ同じ大きさの船で,乗員・観測者合わせて140名を輸送することができます。日本が使用したのはこのうち,観測隊40名分です。

写真:海上自衛隊横須賀基地に停泊中の2代目「しらせ」