2009-06-15
11月に南極へ ― 砕氷艦『しらせ』2代目就役(協力:海上自衛隊横須賀地方総監部)
5月30日・31日「しらせ」一般公開レポート A
11月の日本出港から4月中旬の帰港まで,約5ヶ月間日本を離れる「しらせ」。航路上や南極の自然環境に悪影響を及ぼさないよう,また乗員が安全・快適な航海生活を送ることができるよう,さまざまな設備が用意されています。
初代「しらせ」と比較して当代「しらせ」最大の特徴のひとつと言えるのが,環境に配慮した艦,「エコシップ」であるという点です。
航行中に出たゴミを艦外へ捨てることのないよう,ゴミ処理施設が艦内に新たに設けられました。食材くずなどの生ゴミはバクテリアを使って分解,紙ゴミなどの可燃ゴミは焼却炉で焼却処理します。ガラスは破砕,缶は潰します。ビニールや発泡スチロールなどは圧縮,粉砕して容積を減らします。
また,推進エンジンの一部のエネルギーを,艦内の電力として使うよう設計されています。
観測隊員の部屋は2人部屋です。2段ベッドが1台,それぞれが使える棚つきのデスクと椅子もあります。
食事は乗組員用,隊員用の食堂でそれぞれとります。隊員用は隊員全員が同時に利用できますが,乗組員用は人数分の席がないため交代で食事をします。厨房はひとつで,乗組員・隊員全員分の食事を1度に調理できます。
洗濯は全自動洗濯機もありますが,艦が揺れて斜めになると止まってしまいます。水も自動的に排出されてしまうので,揺れが酷い時は手で洗い,二槽式洗濯機の脱水槽で脱水だけを行っています。
生活する上で必要な真水は,海水を沸騰させてつくります。燃料の節約のため,気圧を低くして沸点を40度まで下げて,殺菌剤を入れています。また,感染を防止するため陸地付近の海水は使わず,遠洋や,低温のため微生物の少ない南極近くの海水を使うようにしています。
風呂には浴槽とシャワーがあります。航海中,真水は貴重なため浴槽を満たすお湯は海水です。浴槽で温まった後,真水のシャワーで髪や身体を洗います。
狭い艦内での生活ではストレスが溜まったり,運動不足にもなりがちです。ルームランナーや筋トレ機器を備えた保養室が用意され,乗組員・隊員を問わず誰もが利用できるようになっています。
初代しらせでは特別な運動設備はなく,荷物を積み込む船倉の片隅にトレーニング機器を持ち込んだり,甲板を走ったりしていました。
ブリザードの時でなければ,南極でも屋外で運動することができるそうです。
航海中の万一の病気や怪我,歯のトラブルも,艦内の医務室で対応が可能です。レントゲンや超音波診断,胃カメラなどの検査のほか,全身麻酔での手術もできます。
艦内で対応できない重症の場合は,国内では近くの陸地の医療機関へヘリで搬送することになります。
写真:上 可燃ゴミ焼却炉 下 観測隊員用の寝室