2009-08-01
夏休み,生き物たちに親しもう! ― 生き物の『多様性』のひみつ (Part 1)
『多様性』って何だろう?
私たち人間の周りには,私たちとは違った姿,違った暮らしぶりを持つたくさんの生き物が暮らしています。
家や町の中で見られるものもいれば,人間に飼われているものもいます。動物園や植物園では,世界の様々な生き物を間近に見ることができます。一方で,テレビやインターネットでもめったにその姿を見られない生き物や,名前さえつけられていない未知の生き物も数多くいます。
未知の生き物の数にもよりますが,生物の種の数はだいたい500万から1,000万くらいだろうと考えられています。
これらの生き物の種の違い,暮らしている場所や環境の違い,遺伝子の違い(※1)をひとまとめにして『生物多様性』といいます。
たくさんの「違う」生き物たちがいることは,私たちヒトにとっても大きな意味があります。
ヒトは昔から動物・植物のからだの一部または全部を食糧にしたり,建物や工業製品,薬の材料などとして使ってきました。
直接には使うことのない生き物の中にも,水や空気をきれいにしたり,ヒトが飼っている家畜のえさになるなどして,間接的にヒトに恵みを与えてくれているものがあります。
また,宗教的に神聖な生き物,あるいは良くない生き物として意味を与えられたり,絵画や音楽,文学などに登場する生き物もいます。ヒトは歴史・文化を発展させる上でも,多くの生き物たちと関わって来たと言えます。
私たちにとって一見何の役にも立たないと思える生き物でも,必要ない訳ではありません。全ての生き物は食う・食われるの関係や,共生・寄生の関係などさまざまな形で繋がっています。たとえひとつの生き物が絶滅したり,大きく数を減らしてしまうことがあったとしても,近い生態の生き物がその代わりとなって繁栄することで,生き物全体の繋がりが守られることもあります。
種の数も,生きている環境も,遺伝子も。色々いることに意味がある ― これが,『生物多様性』とその保護の基本的な考え方なのです。
調べてみよう!
家の周りや近くの公園で生き物を探してみましょう。
朝・昼・夜で見られる生き物に違いはあるでしょうか?
朝・昼・夜の生き物たちはそれぞれ何をしているでしょうか?
スケッチや写真で記録してみましょう。
自分の家ではないところで観察する時は,4ページ目にある注意をよく読んで,
安全に観察できるよう注意してください。 |
※1 遺伝子の違いは,同じ種に属する個体同士,グループ同士の違いです。同じヒトである「あなた」と「私」が同じ体つきや顔つきにならないのは遺伝子が違うためです。
ペットや家畜として飼育されている動物,園芸植物の品種の違いも,同じ種の中での遺伝子の違いによって生じています。例えばウシという種について見てみると,日本では主に牛乳をしぼる目的で飼われている黒地に白ぶちのホルスタインと,肉を食べるために改良された様々な和牛はそれぞれ別の品種です。遺伝子が異なっているため,姿や大きさ,肉の味も違っています。