2009-08-15
夏休み,生き物たちに親しもう! ― 生き物の『多様性』のひみつ (Part 2)
生き物たちが抱える問題:いれば良いってものじゃない!
セイヨウオオマルハナバチは主にヨーロッパに住んでいるハチで,日本ではトマトやナスなどのハウス栽培で授粉のために使われてきました。『ミツバチ減少』の回でもお話しましたが,農作物への受粉を人間の手で行うのは時間も人手も掛かるため非常に大変です。育てたい植物の花の大きさや形に合ったハチを使うことで,農家の方の作業はとても楽になり,その分作物の生産量は増えて値段は安くなります。
一方,もしもセイヨウオオマルハナバチがハウスから逃げ出してしまった場合,日本のマルハナバチとの間で住む場所やえさの奪い合いが起こります。日本のマルハナバチが減ってしまうと,これまで日本のマルハナバチに頼って授粉していた野生の植物も減ってしまう可能性があります。
夏から秋にかけて花粉症の原因にもなるオオブタクサは北アメリカが原産です。道端や川原などに生える草で,非常に背が高く2メートルから大きいものでは6メートルにもなります。虫に頼らず風の力で花粉を飛ばす風媒花で,雄花は茎の先端に,雌花はその少し下につきます。川原・道・畑・荒地などさまざまな環境に適応でき,1ヶ所にたくさん集まって生えているのがよく見られます。
ブラックバスやセイヨウオオマルハナバチと違うのは,人間が望んで持って来たのではないということです。1952年に静岡県と千葉県で見つかったのが最初ですが,家畜のえさとして輸入された穀物や豆に混じっていたのではないかと考えられています。
花粉症以外の問題は,増えやすく成長も早いため,他の植物が生える場所を奪ってしまうことです。埼玉県の荒川河川敷では,特別天然記念物のサクラソウの生息地でオオブタクサが増えた結果,その地域に生える植物の種類が減ったという報告があります。
2004年,このような外来生物たちとどのようにつき合っていけばいいのかを定めた法律『特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)』が制定されました。
オオクチバスなど日本の生き物や日本人の生活に大きな影響を与えると思われる生き物が『特定外来生物』に指定され,許可を受けずに海外から持ち込んだり,飼ったり,野外に放したり(植物の場合タネをまくことも含みます),他の人に譲ったりすることが禁止されました。
セイヨウオオマルハナバチについては,農業への貢献も大きいため初めは指定されませんでしたが,2006年に特定外来生物になりました。授粉など農業用に使いたい場合は,ハチが逃げないようにネットなどを用意した上で,許可を受ければ使い続けることができます。
オオブタクサは今のところ指定されていません。もともと人間が望んで拡げたものではないため,輸入や移動を禁止しても状況が一気に良くなる可能性は低いと考えられたためです。各地で個別に除草や刈り取りが行われており,今後指定するかどうかについても引き続き検討されています。
このように書くと外来生物は,悪い生き物のように思えるかも知れません。しかしそれぞれの生き物が本来暮らしていた国や場所では,他の生き物や人間と共存し,特に問題なく生きていたものがほとんどです(オオブタクサの場合は原産地アメリカでも,花粉症を引き起こしています)。
「いない方が良い」「いてもらっては困る」生き物をこれ以上増やさないよう,その場所にもともといない生き物は持ち込まない,必要があってやむを得ず持ち込む時は逃がしたり捨てたりしないよう,充分気をつける必要があります。
写真:オオブタクサ(Wikipediaより)