2010-04-01

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『はやぶさ』帰還へ,『あかつき』間もなく打ち上げ…太陽系探査機の『その後』

『はやぶさ』間もなく帰還

 2003年5月に打ち上げ,2005年の11月に小惑星イトカワに着陸し,小惑星表面からのサンプル採取に挑戦した小惑星探査機『はやぶさ』。エンジンや姿勢制御装置の故障など様々なトラブルを乗り越え,2010年6月の地球帰還を目指してきました。
 JAXA,月・惑星探査プログラムグループの発表によれば,『はやぶさ』は順調な飛行を続けており,今年1月中旬には地球の引力圏を通過する軌道に入り,2月下旬には月軌道の内側に,3月の半ばには静止衛星の軌道の内側に…と着実に地球に近づいています。

 『はやぶさ』の最終的な目標は,イトカワのサンプルが入っている可能性のあるカプセルを地表に帰還させることです。3月の半ばまでの『はやぶさ』は地球の公転軌道の内側(地球から見ると太陽方向,昼側)を通る軌道を飛行していました。地球は太陽の周りを反時計回りに公転しながら,同時に反時計回りに自転しています。公転軌道の内側から地球大気に突入した場合,地球の自転と進行方向が逆になる為,突入の速度が速くなり過ぎます。速度を下げるには公転軌道の外側を通るよう『はやぶさ』の軌道を変更し,地球の自転方向と同じ方向から突入させる必要がありました。
 3月25日,『はやぶさ』は地球の夜側を通る軌道への軌道変更に成功,昨年春から断続的に行って来たイオンエンジンの運用を終了しました。

 現在の軌道は最も地球に近づいた時で高度1万4000キロ。この後も少しずつ軌道を調整しながら,引き続きカプセルの回収を目指すことになります。


打ち上げ迫る金星探査機『あかつき』

 金星探査機『あかつき』(プラネットC)プロジェクトは,金星の大気や気象現象の観測を主な目的とする,世界でも初めての本格的な惑星気象探査ミッションです。2010年5月18日に種子島宇宙センターから打ち上げられ,打ち上げから約半年後には金星に到達する予定になっています。

 金星は赤道面での直径が地球の約95%,質量は82%。地球と同じく岩石質の地表を持ち,成分は大きく異なりますが大気をもっています。太陽系の他の惑星と比べると,直径がより小さかったり,大気がなかったり,或いは地表がガス状だったりと,地球とはかけ離れた姿のものが多い中,金星は地球と良く似たタイプの惑星と言えます。
 しかしこの2つの惑星にそれぞれ近づいてみると,大気と気象の様子は大きく異なっています。金星の大気の主な成分は二酸化炭素で,太陽からのより近い距離と,二酸化炭素による温室効果が地表を温め続け,地表面の温度は摂氏約460度にもなります。大気圧は地表でおよそ90気圧,空は硫酸の雲で覆われ,秒速100メートルにも達する暴風『スーパーローテーション』が吹き荒れています。金星の自転速度よりも遥かに速いこの風の生じるメカニズムは,太陽系の中でも最大の謎のひとつです。

 地球と良く似た大きさの惑星,金星の大気を調べることで,地球の大気はどのようにして生まれたのか,金星のような過酷な環境にならずに済んだのは何故なのかを理解することができると期待されます。
 金星の厚い雲の下では,何が起こっているのでしょうか。地球のように稲光が閃いたり,火山活動による焔や灰を見ることはできるのでしょうか。『あかつき』に搭載された複数の波長のカメラが捉える,金星の素顔に期待しています。


写真:金星探査機『マゼラン』が撮影した金星(NASA/JPL)

(研究推進課 西村美里)