2010-07-16

生き物から教えてもらう技術 !---「バイオミメティクス」研究最前線


バイオミメティクスとは?

 「バイオミメティクス」とは、生物模倣、つまり、生物の構造とその機能から着想を得て、それらを人工的に再現することによって、工学や材料科学、医学などの様々な分野への応用を目指そうとする研究です。

・「バイオミメティクス」のはじまり
バイオミメティクスの概念(考え方)はかなり古くからありました。1950年代後半に神経生理学者のオットー・シュミット博士によって提唱されました。彼は、シュミット・トリガーという、ノイズ除去用電気回路を発明しました。これは、イカの神経をつかった神経系の研究によって生み出された成果の一つだそうで、そもそも、彼の研究テーマは、生体の機能を工業応用することだったようです。

・「バイオミメティクス」の研究は、今どんな状況なのでしょうか?
この「バイオミメティクス」の研究は、比較的新しい研究分野で、現在、欧米、特にヨーロッパ先進国で活発に行われています。日本では、この分野の研究が発展し始めたところのようです。この分野の特徴として、研究を推進するためには生物学、物理学、化学、工学、医学などの大変広範な分野の研究者がしっかりと連携することが大切といえるでしょう。これまではなかなか混じり合うことのなかったような違う分野の研究も、実際に携わる研究者が一緒になって、同じ方向を向き、特定のテーマに向かって研究を進めることが重要になってきます。

 日本においては、次世代に向けた「バイオミメティック材料」への関心が高いものの、まだ現状では欧米の研究に比べ、始まったという状態のようです。今世紀になって学際的な融合と産学連携のネットワーク形成を促す政策的な働きかけもあり、「次世代バイオミメティック材料」研究が注目され始めました。工学と生物学の連携やバイオミメティクスの産業においての展開など、よりいっそう充実して図っていくため、我が国が早急に取り組む必要のある課題について、大学、博物館、研究機関、企業、科学技術政策など様々な立場からの問題提起と意見交換の場が作られつつあります。2010年6月8日にも、国立科学博物館を会場にシンポジウムが開催されました。様々な発表において、現状の確認、生物から具体的に開発された技術が紹介、これからについて、発表・議論されました。