2008-10-23
速報:ノーベル化学賞受賞:緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発 (協力:理工学研究部 若林文高・動物研究部 並河洋・植物研究部 細矢剛)
光を放つ生き物たち
光を放つ生き物,と言えば,どのような生物を思い浮かべますか?動物ならホタル,ウミホタル,深海魚などでしょうか?
ホタルやウミホタル,一部の深海魚では,体内に酵素を触媒として酸化されることで光を放つ物質「発光素(ルシフェリン)」を持っています。
ルシフェリンは酸化によって発光する物質の総称です。ホタルにはホタルの,ウミホタルにはウミホタルのルシフェリンがあり,それぞれホタルルシフェリン,ウミホタルルシフェリンと呼ばれています。酸化酵素はルシフェラーゼといい,多くの場合,ある生物のルシフェラーゼは同じ生物のルシフェリンとしか反応しません。
また発光する場所も生物によって異なります。ホタルや多くの深海魚では発光のための反応はすべて体内で起こりますが,ウミホタルではルシフェリンとルシフェラーゼを体外へ放出し,水中で光を放ちます。
発光する目的についても諸説ありますが,ホタルでは求愛のためや,毒を持ったまずい昆虫であることを天敵に知らせるため,ウミホタルは刺激を受けると激しく発光することから,天敵に対する目くらましや仲間への警告,ホタルと同じく求愛目的とも言われています。
また菌類にも光るものがあります。
ブナやナラなどの広葉樹で見られるツキヨタケは,食用のムキタケやヒラタケに外見が良く似ていることからしばしば中毒事故が起こるキノコとして知られていますが,暗闇ではひだの部分が淡い緑色に光ります。これはひだの中にある成分,ランプテロフラビンによるものと言われていますが,正確なところは判っていません。
ツキヨタケは成熟すると光らなくなることもあり,夜に光れば有毒のツキヨタケ,光らなければ無毒のキノコ,という見分け方に頼るのは危険です。
下痢や嘔吐など食中毒の症状のほか,幻覚が見えることもあり,最悪の場合は死に至ることもあります。判断は必ず専門家に任せるようにしてください。
キシメジ科のヤコウタケやシイノトモシビタケも光るキノコとして知られています。ヤコウタケは小笠原諸島や八丈島などに発生するキノコで,「グリーンペペ」という愛称で親しまれています。
ヤコウタケの光るメカニズムも今のところ判っていません。
これらのキノコが光る理由についても,夜行性の昆虫を誘引するため,生命進化の初期には有害であった過剰な酸素を酸化反応によって消費するためなど諸説ありますが,こちらも未だ謎のままです。
下村氏もこれらキノコの光に注目され,現在自宅で研究を続けられているとのことです。
※ 国立科学博物館では現在開催中の特別展『菌類のふしぎ−キノコとカビと仲間たち』(〜09年1月12日)に於いて,光るキノコ,ヤコウタケを展示しています。
光るキノコは培養が難しいため,実物展示ができない日もあります。その日の光るキノコの様子は,モバイルサイトでお知らせしております。あらかじめご確認の上お出掛け下さいますようお願いいたします。
写真:ヤコウタケ(
Mycena chlorophos)