2013-12-26

ランの「生きた化石」が世界で初めて開花!


ランは新しい植物ではない

写真:爆発的に多様化したラン、レパンテス属(Lepanthes)のいろいろ。熱帯アメリカに約1000種が自生する(写真:岩瀬順一)



 ランか?ランではないか?というもやもやは消え、晴れてノイウィーディアはラン科の家族になることがはっきりしました。それとともにランは「進化の頂点にある新しい植物」という見方に修正が必要です。約9000万〜8000万年前にランが存在していたとすると、植物の中で取りたてて新しいグループとは言えません。

 ノイウィーディアの仲間は地球上に8種だけが細々と生きています。まさに「生きた化石」です。対照的にそのほかのラン科の種数は26000あまり。植物界で最大の種を持つ科です。生物の進化では、いろいろな種類が現れては消えることを繰り返しています。ノイウィーディアなどのヤクシマラン亜科は白亜紀に進化の最前線に躍り出たものの、成功できなかったようです。

 一方、その後あらわれたラン科のいくつかのグループは大いに繁栄しています。この爆発的な種の進化がいつ、なぜ、どのように起こったか?私たちはこのなぞ解きに挑んでいます。

 進化が「凍結」したノイウィーディアと「爆発」したランのグループとを比べれば、繁栄と衰退をもたらす原因のヒントがつかめるはずです。今回の開花を他の生き物にたとえるなら、シーラカンスを生け捕りにしたのと同じ価値があるといっても過言ではありません。



<執筆・監修> 遊川知久
国立科学博物館 植物研究部 多様性解析・保全グループ グループ長
兼)筑波実験植物園研究員