2020-03-30
日本人の貢献が大きいリチウムイオン電池の実用化
(2)リチウムイオン電池とは
図2:リチウムイオン電池の構造(それぞれの電極の分子構造を示している)
吉野彰博士がリチウムイオン電池開発への貢献により2019年度ノーベル化学賞を受賞されたことから、あらためて関心を持たれた方も多いと思います。リチウムイオン電池とは、その名のとおり、リチウムイオンが+極と−極の間を移動することで充電や放電を繰り返す電池です。図2はその基本的な構造で、一般的に+極にはコバルト酸リチウム(LiCoO₂)など,リチウムとコバルトやマンガンなどの金属との複合酸化物が、−極にはカーボン系の材料が使われています。最近では、+極材としてリン酸鉄リチウムのようなリン酸鉄系の材料も使われだしました。充電時は、+極のコバルト酸リチウム(LiCoO₂)に含まれていたリチウムイオンが電解液中に放出され、−極の炭素質材料に取り込まれます。逆に放電時、つまり電気を使う時は炭素質材料からリチウムイオンが電解液中に抜け出し、+極の材料に取り込まれます。こうしてイオンと電子が関与して充放電を行うことができます。
リチウムイオン電池の開発には多くの研究者や企業が貢献しています。Dr. J. B. Goodenoughや水島公一らによるコバルト酸リチウム(LiCoO₂)の研究と+極材料としての提案、Dr. Rachid Yazamiによる黒鉛のリチウム挿入・離脱現象の研究、三洋電機の池田宏之助らによるリチウムイオン電池の開発、そして吉野彰博士による上記の基本的原理となるカーボン系材料を用いた−極の提案や安全性を高めたセパレータ、より高密度 な−極炭素材料及び+極のアルミ箔集電体の開発などです。これら研究開発を通してより安全な、より大容量のリチウムイオン電池が実現したのです。