2022-03-10

福徳岡ノ場火山2021年8月噴火に伴う軽石ラフトの漂流


(1)海底噴火を研究する貴重な機会到来:福徳岡ノ場2021年8月噴火

図1.福徳岡ノ場2021年8月噴火の時間推移。(左)衛星写真から確認された噴火に伴う噴煙柱と海面に浮遊した軽石と海水変色域の分布。(右)衛星写真から追跡した軽石ラフトの移動過程(当館特別研究生・池上郁彦氏作成)。

福徳岡ノ場は伊豆小笠原諸島の南端部に位置する活動的な海底火山です。気象衛星の観測から2021年8月13日6時頃から噴火を開始し、噴煙高度が16 kmと対流圏界面に達する大規模噴火が起こったことが確認されました。噴煙柱は300 km以上離れた小笠原諸島からも観察され、これは21世紀に入ってから日本国内で発生した噴火としては、陸上火山を含めても最大規模です。噴火は約3日間継続し、8月15日に海上保安庁が実施した航空機からの観察によって、1986年の噴火以来35年ぶりに新島が誕生していることが分かりました。また衛星写真から、噴火開始と同時に海面下に変色域が出現し、その後、海面上に軽石が浮上しているのが観察されています。
日本列島の周辺海域には多数の海底火山が存在していますが、陸上の火山とは異なり、地震計などを使った観測網が不足しています。また詳細な海底調査を行うことも困難であることから、その活動履歴や噴火メカニズムはよく分かっていません。福徳岡ノ場2021年噴火は、海底噴火の時間変化を衛星や航空機を使ったリアルタイムの観測を使って詳細に研究することができる貴重なチャンスなのです。