2023-01-26
最新研究が明らかにした日本列島の小型サンショウウオの多様性
(4)増え続ける絶滅危惧種
図4.(左)ツクバハコネサンショウウオ
O. tsukubaensisは茨城県の筑波山と周辺の山だけに生息する。(右)トサシミズサンショウウオ
H. tosashimizuensisは高知県の極めて限られた範囲の数か所の池だけに生き残っている。
急激に種数が増加した日本の小型サンショウウオですが、これは研究者たちによるDNAを用いた遺伝子解析といった最新の手法の導入や、フィールドでの長年の地道な調査によって得られた知見や標本の蓄積がついに実を結んだ結果です。種の増加の大部分は、これまで広域に分布する「普通種」とみなされていた種の分類が見直され、複数の種に分割されたことが大きな要因となっています。これまで見過ごされてきたサンショウウオの多様性と地域固有性の実態が明らかになりつつある一方で、一つ一つの種の分布域はより狭い範囲に限定されました。そして、新種となった種の多くがすでに絶滅の危機にあるという事実も同時に浮かび上がってきたのです。
2020年版環境省レッドリストでは、34種の小型サンショウウオが絶滅危惧種(CR、EN、VU)として掲載されています。小型サンショウウオの種の多様性を正確に把握するための分類学的な研究が進められる中、今後はその多様性をどのようにして守っていけばよいのか、保全に向けた研究や保護活動も同時に進めていくことが求められています。
<執筆>
国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ 研究員 吉川 夏彦