2009-08-15

夏休み,生き物たちに親しもう! ― 生き物の『多様性』のひみつ (Part 2)


生き物たちが抱える問題:いれば良いってものじゃない?

 前回,Part 1の第1ページで,『生物多様性』とは「種が違う,暮らしている場所や環境が違う,遺伝子が違う」様々な生き物たちがいることだとお話しました。
 たくさん,いろいろいた方が良い。たいていの場合はその通りです。

 しかしその一方,「いない方が良い」「いてもらっては困る」生き物もいます。
 もともと日本にはいなかった生き物が,日本に持ち込まれた時。日本の中でも一部の地域にしかいなかった生き物が,他の地域に持ち込まれた時。もといた場所では何の問題もなかったはずの生き物たちが,新たな場所では厄介ものになる場合があります。

 もともと住んでいなかった地域に,人間の手で運ばれて来た生き物を『外来生物』と呼びます。「人間」が関わっているかどうかが大切なところで,自分で空を飛んで来る渡り鳥や,海流に乗ってやって来る魚は外来生物とは言いません。逆に,人間にそのつもりがなくても,人間が食べるために輸入した農作物にまぎれ込んで移動した別の植物の種や昆虫も外来生物になります。

 持ち込まれた生き物の多くは,本来生きていたのとは違う環境に放り出されて死んでしまったり,生きられても子孫を残すことはできずにやがて消えて行きます。しかし持ち込まれた場所の環境がたまたまその生き物の生態と合っていたり,持ち込まれた数が多かったりすると生き延びて,新しい場所で増えて行くことがあります。そうなると,もともとその場所にいた生き物をえさとして食べたり,住む場所を奪ったりして問題になることがあります。元いた生き物と外来生物がたまたま近い種類だった場合,2つの種の間に子どもが生まれてしまい,元の生き物の遺伝子の特徴が失われてしまうこともあります。
 
 オオクチバスは,北アメリカから輸入された全長およそ30センチ〜50センチの肉食の淡水魚です。他のバスのなかまと合わせてブラックバスとも呼ばれています。
 食用や釣りのターゲット用として,1920,30年代に国の許可を得て国内数ヶ所の湖に放流され,その後も主に釣り用に全国で放流が続きました。
 オオクチバスが引き起こす問題は,食欲の旺盛な魚なので,放流された湖や沼にもともと住んでいた小魚や稚魚,その他の水生生物を食べてしまうということです。その結果,湖や沼の生態系や漁業に良くない影響を与えています。

写真:日本館2階『日本人と自然』で展示中のオオクチバス(下。上はコクチバス)