2009-09-01
トキ野生復帰への挑戦 ― 2回目の試験放鳥を控えて (協力:動物研究部 西海功)
トキ,第2回放鳥へ
トキ,
Nipponia nipponは,コウノトリ目トキ科に属する鳥です。
全長(くちばしの先から尾羽の先までの長さ)は約75センチ(佐渡トキ保護センターによる。以下同),翼開長(翼を広げたときの左右の翼の端から端までの長さ)は約140センチ,体重は1.6kgから,大きいものでは2kgになります。
色は全身ほぼ白ですが,翼の裏側は柔らかな桃色でこの色を指して朱鷺色と呼びます。繁殖期は春から夏で,この時期には首の周りから黒っぽい分泌物を出します。この黒いものをくちばしを使って頭や翼,背に塗りつけるため,繁殖期のトキは体の上半分を中心に灰色になります。
日本では1981年,当時野生に残されていた5羽を捕獲し,先に捕獲されていた1羽と合わせた6羽で飼育,人工繁殖を試みました。しかしいずれも成功しないまま,2003年最後の1羽の死亡と共に,国産のトキは絶滅しました。
現在野生では中国に生息する約500羽を残すのみとなっており,世界的にも絶滅の危機に瀕している種のひとつです。
日本産トキが最後の1羽となり,高齢のため繁殖も絶望視されていた1999年,中国産のトキ2羽が日本に贈呈されました。
中国のトキは日本のトキと全く同じ種類(2004年,環境省による遺伝子検査で確認)です。この2羽を人工繁殖させ,その子を更に中国の個体とペアリングさせて数を増やすことで,国内でのトキの個体数増加,将来的な野生復帰が目指されることになりました。
同年初のヒナが誕生,その後も順調に続いた個体数の増加は報道などでも繰り返し取り上げられているとおりです。
繁殖に続く野生復帰へのステップとして,昨年9月に10羽のトキが佐渡市内から野生に放たれました。残念ながら1羽は死亡,1羽は放鳥後行方が判らないままですが,残りの8羽は佐渡市内あるいは北陸各地で無事が確認されています。
今年も今月29日,トキの放鳥が行われることが決まっています。昨年は果たせなかった野生での繁殖が大きな課題になっているほか,昨年に続き野生でのトキの生態の理解に繋がると期待されます。
写真:婚姻色のトキ(国立科学博物館蔵,非公開)