2010-03-15
チリの大地震と津波警報 (協力:地学研究部 横山一己)
大津波警報:緊張の1日を振り返って
2010年2月27日,日本時間同日15時34分,南米,チリ中部の沖合(南緯36.1度,西経72.6度)でマグニチュード8.8(アメリカ地質調査所発表)の地震が発生しました。
3月5日現在の共同通信の発表(新しいものが出れば差し替え)によると,現地ではこの地震で亡くなった方が800人を超え,行方不明の方も多いため被害の全貌ははっきりしていません。5日にもマグニチュード6を超える余震が2回発生するなど,不安が続いているようです。震源に近い地域では飲料水や救援物資の供給が不十分なほか,電力も復旧していません。
地震発生から約18時間後の,28日朝9時33分。気象庁は青森県の太平洋沿岸・岩手県・宮城県に大津波の津波警報(以下,大津波警報と書きます),北海道から沖縄,小笠原諸島を含む太平洋側の広い地域と,日本海沿岸,瀬戸内などの一部の地域に津波警報,オホーツク海沿岸や瀬戸内,西日本の日本海沿岸の一部に津波注意報を発表しました。
大津波警報は高いところで3メートル程度以上,津波警報は同じく2メートル程度の津波が予想される場合に警戒を呼び掛けるもので,津波注意報は高いところで50センチ程度の津波が予想される場合に注意を促すものです。
地方自治体ではこれを受けて,大津波・津波警報が発表された地域を中心に,沿岸の住民などに対して避難指示または避難勧告が出されました。28日午後6時現在の朝日新聞の集計によれば,避難の指示や勧告を受けたのは20都道府県で約66万5千世帯,149万8千人に上りました。
交通機関への影響も大きく,国土交通省の取りまとめ(3月2日10時,国土交通省災害情報)によると,鉄道路線ではJR各社などを含む16事業者の合計58路線が,最も長いところで28日の午前11時から翌日の始発までの運転を見合わせました。高速道路は最大3ヶ所,国道は10ヶ所で通行止めとなりました。フェリーも48事業者が運休しました。
津波の第1波が最初に観測されたのは,小笠原諸島南鳥島の検潮所で12時43分,高さは0.1メートルでした(28日13時02分,気象庁津波情報3号)。その後13時14分には茨城県神栖市,13時47分には根室市花咲などに相次いで第1波が到達しました。
3月1日10時33分(同20号。この地震に関する最終情報)までに津波が観測した国内の検潮所は,北海道から沖縄までの各地で,合計118か所に上りました。
幸い津波の高さは予報ほどには上がらず,大津波警報は津波警報へ,津波警報は津波注意報へと段階的に縮小・解除されました。気象庁は3月1日,津波の予測が過大だったこと,警報・注意報が長引いたことについて謝罪しました。
一方で,人的な被害こそ出なかったものの,三陸沿岸では丁度収穫期を迎えていたノリや昆布の養殖施設が壊れ,大きな損害が出ています。ホタテやカキの施設も多数が損傷しました。今年の収穫だけでなく,施設自体の損害によって来年以降にも影響が残るのではないかと心配されています(3/2 gooニュース)。
図:1メートル以上の津波が観測された地点(気象庁HPによる)