1.アジア・オセアニア地域の自然史に関するインベントリー構築
1-1.深海動物相の解明と海洋生態系保護に関する基礎研究 【第4期:平成17〜20年度】
平成5年に開始された本プロジェクトは4年を1調査研究期間として、駿河湾、土佐湾、南西諸島で実施し、各海域ごとに、深海動物相を明らかにするとともに、その保護のための基礎的なデータとなる人為汚染物質の深海生態系への流入状況についての研究を実施してきた。それらの成果は、各期ごとにNational Science Museum Monographsの第12号(平成9年、336頁)、第20号(平成13年、380頁)、第29号(平成17年、476頁)として出版した。
平成17年度からの本プロジェクト第4期は、調査海域を東北太平洋岸とし、日本海溝へと下る大陸斜面で研究を行っている。平成19年度は3隻の調査船によって採集調査を実施した。7〜8月には独立行政法人水産総合研究センター所属研究調査船「蒼鷹丸」に当館職員2名(および連携大学院の学生1名)が乗船し、東北太平洋岸沖合の深海域の9地点(水深約800〜5,300 m)でベントスネットおよび籠網によって底生性の無脊椎動物及び魚類の採集を行った。10〜11月には水産総合研究センター所属研究調査船「若鷹丸」に当館職員4名が交替で乗船し、水産総合研究センター東北区水産研究所との共同で、常磐〜東北太平洋岸沖の約170地点(水深約150〜1,500m)でオッタートロールおよびドレッジによって底生生物の採集を行うとともに、CTDによる海洋環境の調査を行った。さらに、これらの調査を補完するために、11月初旬に独立行政法人海洋研究開発機構所属研究調査船「淡青丸」に当館職員3名が乗船し、東北〜北海道沖の太平洋12地点(水深約500〜2,000m)でORI型3mビームトロールによって底生生物の採集を行った。
これらの調査で得られた標本は当館において一時的な処理を終えた後、平成18年度までに既に得られている標本とあわせて、各動物群ごとに、当館職員ならびに他機関の研究者の協力によって詳細な研究が進められている。またこれらの生物標本への汚染物質の蓄積についての分析調査が、愛媛大学の共同研究者によって行われている。