1.アジア・オセアニア地域の自然史に関するインベントリー構築
1-2.相模灘地域の生物相の起源探究に関する調査研究 【第1期:平成18〜22年度】
本総合研究は、海洋生物研究班、沿岸生物研究班、地質研究班の3研究班で構成されている。平成19年度は、平成18年度の予備的な調査を踏まえて研究を進めた。 海洋生物研究班では、主に11月に実施された海洋研究開発機構所属学術研究船「淡青丸」の調査航海におけるビームトロール並びにドレッジ調査により、相模湾から八丈島沖の海域で海産無脊椎動物の標本を収集した。八丈島沖については、7-8月に東京都島しょ農林水産総合センター八丈事業所所属調査船「たくなん」を使ったドレッジ調査も実施し、標本を収集した。
沿岸生物研究班では、フォッサマグナ地域に特徴的な生物の起源を探るために、各生物群の特性に応じて採集を行い,資料を収集した。主な採集地は、藻類が鎌倉沿岸、維管束植物が相模湾沿岸、菌類が入生田付近である。クモ類については、八丈島において現地調査を行なった。現在当該分類群を専門とする研究者が、収集した標本をもとに生物相解明のための研究を進めている。これまでに未記載種と思われる海産無脊椎動物が多数見出されており、クモ類ではヤチグモの未記載種をはじめ数種の興味ある種が含まれていることが判明した。菌類においては、野外でアオキより採集したMarasmius aukubaeの分離菌株を確立し、野外から採集したアオキ生葉及び生枝をネットに入れて樹上にぶら下げた状態での子実体形成の観察によって、エンドファイトとして分離された可能性について検討を行っている。
地質研究班では、300年前に最後の噴火を行い、16日間で7億立方メートルのマグマを噴出した富士山からの噴出物を、噴出した順番に連続的に採取し、記載及び化学分析を行った。これにより噴火の進行に伴うマグマ組成の変化が明らかとなった。この研究成果の一部は、平成19年度に行った企画展「富士山展 宝永噴火300年」で展示した。