1.アジア・オセアニア地域の自然史に関するインベントリー構築
1-3.西太平洋地域の生物多様性インベントリー 【第3期:平成19〜20年度】
本プロジェクトは、当館が行なってきた日本列島の自然史に関する総合研究の成果をもとに、西太平洋地域における多様な生物相に着目し、そのインベントリーを構築することを目的としている。
平成19年度は調査対象地域を、インドシナと中国東南部及び第1、2期の調査地域に設定し、当館職員11名が参加し、日本列島を含む西太平洋の熱帯・亜熱帯・温帯域における動植物の多様性の起源及びインドシナの地質発達史に関する以下のような調査・研究を行った。
インドシナでは、ベトナム科学技術アカデミー、ハノイ大学、チェンマイ大学、カセサート大学等の研究機関の協力を得て、ベトナムにおける小哺乳類の分類学的研究、タイ北部及び西部におけるメコン川流域のクモ類相の研究、東シナ海のドクサバフグの分類学的研究、ベトナムにおけるスンダランドと他の大陸との境界領域の年代測定に関する地質学的研究を実施した。中国南部では、中国科学院昆明植物研究所の協力を得て雲南省南部におけるコケ植物の分類学的及び植物地理学的研究を実施した。また、モンゴルではモンゴル大学の協力を得て日本の珪藻植生との類似性に関する研究を実施した。マレーシアではサラワク州森林研究センターの協力を得てカメムシ類のインベントリー調査を実施した。フィリピンではミンダナオ中央大学の協力を得てコケシノブ科を中心としたシダ植物の分類学的研究を実施した。
これまでに(1)インドシナと中国南部及びモンゴル,マレーシア,フィリピンの動植物の多様性に関する新知見、(2)ベトナムの砂中鉱物の年代測定からのスンダランドと他の大陸の起源に関する新知見など、西太平洋の生物多様性の起源や島孤発達史を考察する上で重要な成果が得られている。19年度の成果は、国立科学博物館専報で公表する予定である。