1.アジア・オセアニア地域の自然史に関するインベントリー構築
1-4.東アジアにおけるホモ・サピエンスの移動・拡散と変異に関する調査研究 【第1期:平成18〜21年度】
沖縄県港川遺跡と山下町第一洞穴遺跡出土の更新世人骨化石について、形態学的な再検討を行うため、日本列島の縄文人、及び東南アジアの更新世末〜完新世前半の古人骨資料を調査し、比較データを収集している。比較解析は平成20年度以降に行う予定であるが、調査範囲を広げた今回の研究で、日本列島最古の人類集団について、新たな情報がもたらされると期待している。
縄文時代前期の人骨群として貴重な彦崎貝塚出土人骨を調査したところ、個体数は最低でも25個体存在し、胎児3、若年3、青年が男性5女性2、中年が男性2女性3、老年が男性2という年齢構成となった。特徴として、女性人骨の身長が大きく、関東縄文人の平均身長や岡山県の後期縄文時代の津雲貝塚人の平均身長よりも5cmほど高いことが挙げられる。また、幾つかの人骨には病変も見られ、恥骨骨折、腰椎の変形性脊椎症、頚椎の変形性関節症、そして現在調査中ではあるが、脊椎炎または結核によるものと推測される下部胸椎-腰椎の変形などが観察された。
平成17・18年度の発掘で種子島広田遺跡から出土した人骨のDNA分析を行った。今回解析できたのは3体だけで、この集団の遺伝的特徴を捉えることはできなかったが、D−ループ領域の配列を詳しく解析して、血縁関係について検討した 。