2.変動する地球環境下における生物多様性の成立と変遷 【第1期:平成18〜22年度】
本総合研究は、筑波実験植物園、附属自然教育園と地学研究部の異なる分野の研究員が参加し、1)多様性創出の経時的変遷、2)形態・形質変化の過程と機構を解明する2つの研究グループに分け、環境と生物多様性とのダイナミックな相互作用を明らかにすることを目的として平成18年度から進めている。平成19年度は初年度に引き続き、,日本列島及び環太平洋各地の調査と試料の収集とその解析、世界各地に保管されている関連資料の研究等をおこない、平成18年度の調査研究の成果も加え、以下のような成果が得られた。
多様性創出の経時的変遷研究グループでは、1)琵琶湖の掘削ボーリングコアーの解析による琵琶湖固有珪藻種スズキケイソウの起源の解明、2)極東ロシア前期三畳紀のオウムガイ類によるペルム紀末の大量絶滅後の生物多様性回復に関する新たな知見、3)東南アジア熱帯島嶼地域後期新生代のソンデ階の時代に関する新知見、4)北太平洋のアシカ科鰭脚類の適応進化に関する新知見、5)中国産後期新生代ウサギ科Pliopentalugus属の新種の認定と同属の系統分類学的新知見、6)太平洋表層大循環とThalassionema属珪藻の地理的分布の対応関係の解明、など多くの成果が得られた。
また、形態・形質変化の過程と機構研究グループは、1)マダガスカル産絶滅鳥類エピオルニス8個体のCTスキャンによる脳函内壁構造の三次元モデル化、2)乗鞍岳のオオバコを例とした紫外線防御物質としてのフラボノイド及び関連物質の変動とその成分の化学構造の解明、3) 日本産カキラン属全種の共生菌相の分子同定による植物体と共生菌パートナーの遺伝子型の相関に関する新知見、4)先島諸島の留鳥の生態調査による種及び亜種分類に関する新知見、などの成果が得られた。平成19年度の成果の一部は関連する学会等で発表し、そのうちのいくつかは学術雑誌に論文として公表した。