4.日本における絶滅危惧植物に関する研究 【第1期:平成18〜22年度】
平成19年度は第1期2年目として、日本で最も絶滅危惧植物の集中する琉球列島を対象地域として実施した。植物研究部職員8名が参加し、琉球大学、台湾大学、中央研究院・國立自然科学博物館(台湾)、フィリピン国立博物館、ボゴール植物園、クイーンズランド標本館など国内外の関連研究機関の協力を得て研究を進めた。実施方法は絶滅危惧植物の中でも緊急な調査研究が必要な分類群、各職員が専門とする分類群を選定してその分類学的評価、自生地調査及び保全に関する研究を行った。平成19年度の成果一部を下に記す。
研究では、琉球列島固有の絶滅危惧植物ヒメショウジョウバカマの外部形態及び葉緑体DNAを用いた系統解析の結果遺伝的に2つのグループになることが明らかとなった。また、フィリピン、台湾から琉球列島にかけて分布すると考えられていたモロコシソウは琉球列島の固有種であることが示唆された。その他,対象地域とその関連地域に産する汽水性沈水植物、地衣類、シダ植物(フイリリュウキュウイノモトソウなど)、着生植物、カワゴケソウ科、カワツルモ属、ヤクシマランなどにおいて、フラボノイド、DNA、染色体、形態など多岐形質データを基とした系統分類的研究を行った。
保全では、野生絶滅種であるオリヅルスミレ、絶滅危惧種であるオキナワマツバボタン、ヒロハケニオイグサ、ミヤコジマソウ、エナシシソクサ、イソノギク、オキナワスミレ、ジャコウキヌラン、ハナコミカンボク他30種類の琉球列島産絶滅危惧植物を筑波実験植物園に導入した。
なお、筑波実験植物園において、本重点研究の成果を活用して企画展「絶滅危惧植物展」(9月16日〜24日)を開催し、パネルや生植物の展示を用いて絶滅危惧植物の問題、生物多様性の重要性に関する社会発信を行った。